カサンドラ症候群について


カサンドラとは何のこと?


カサンドラ症候群という名前は聞いたことがあるでしょう。最近は色々なメディアで取り上げられ始めました。

これはアスペルガー症候群(以下アスピーと略します。ちなみに蔑称ではありませんよ。欧米ではそう呼ばれているようです)のパートナーを持たれた女性・男性が陥ることのある心理状態です。ただし正式な精神疾患としての名称ではありません。

 

でもみなさん、一体「カサンドラ」とは何のことか知っていますか?

いろいろ調べてみると面白いことがわかりました。そもそもカサンドラと言うのはギリシャ神話で太陽神アポロンに愛され、アポロンの恋人になる代わりに予言能力を授かった女性の名前なのです。

 

しかしその予言能力の結果、カサンドラはアポロンの愛が覚めて将来自分のもとを去っていくという未来が見えてしまったのです。そのためかサンドラはアポロンが信じられずにアポロンの愛を拒絶してしまうのです。神様とはいえギリシャ神話は実に人間味がある神話ですね。だから私は大好きなのですが(-_-;)。

 

 

しかし愛情を拒否されたアポロンは、まるで拗ねた人間の男性のようにカサンドラに恨みを覚えて、周囲の神々に「今後カサンドラの予言は一切信じないようになる」という呪いをかけてしまったのです。そのことからカッサンドラーの予言は誰も信じてもらえなくなったのです。その逸話から「真実を知ってそれを周囲に伝えても信じてもらえない人」の代名詞としてカサンドラの名前が使われるようになったとのことです。


カサンドラがなぜアスピーと関係があるのか?

さてその「カサンドラ」の名前が付けられた状態がなぜアスピーと関係があるのでしょうか?

実はカサンドラ症候群とは、イギリスのマクシーン・アストンとオーストラリアのトニー・アトウッドさんが詳しく論じているアスペルガー症候群のパートナーを持つ女性・男性が陥りがちな心理状態なのです。

 

具体的には、どうしても相手の気持ちに気が付きにくいパートナーと結婚したりして一緒にいる時間が長くなると(おつきあいしている間はたまにしか合わないのでなかなか気が付きにくいのですが)、日常のちょっとした言葉のやり取りの中でこちらの気持ちを逆なでするような言葉を投げかけられたり、「こういう時にはちょっとした思いやりの言葉がほしい」と思ったときでも「ありがとう」「おかげで助かったよ」「君も大変だったね」「それは辛かっただろうね」というような言葉をかけてくれることがありません。だって、パートナーはそもそもそういう気持ちに気が付かないのだから。

 

特に日本人はそういう何気ない思いやりや気配りを大切にする文化ですから、そういうやり取りがないとこたえるでしょうね。そういう実例はカサンドラだと思われるクライエントお話を聞かせていただくと山ほどあります。本当に大変ですよ。


具体的にどんな影響があるのか

ところが問題はそれだけにとどまりません。大体においてそういうパートナーは「秩序正しく」「理路整然と」「感情をあまり出さずに(出せずに)」「決まったルールは守る(こだわり)」方であることが多いので、日常生活を共にしていない周囲の人達(たとえば友人や両親)等からすると「ちょっと無口だけど真面目そうな人」「不愛想だけど浮気しそうにない誠実そうな人」と見られてしまうのです。

 

それだけに「いや、実は一見そう見えるけれど一緒に暮らしていると、これこれこういう困った人なんだ」といくら訴えてもわかってもらえません。それどころか「あなたの我慢が足らない。」「男っていうものはそういうものよ」「あなたの方がわがままなんじゃない?」と言われて、全く信じてもらえません。

 

それって誰かににていませんか?そう、カサンドラさんなのです。

 

こういう状態に置かれると「だれも本当のことを信じてもらえない」「でもこんなに私は困っている」と言うジレンマとストレスで心身の調子を崩してしまうのです。

 

こういうことからアスピーのパートナーを持つ方の苦しみのことをカサンドラ症候群というのです。


ではどうすればよいか?

ではカサンドラ症候群に陥ってしまった場合、どうすればよいのでしょうか?

まずは病院などでご自身の体調の回復を図ってください。しかしそれだけでは解決にはつながりません。パートナーとの関係性を見直す必要があります。もちろんアスピーと言っても個人差があるので、一概に特効薬的な対応策はありませんが、私はまずはパートナーの言動の観察から始めてもらいます。つまりコミュニケーションの特性や認知の特性についてこちらが見極めていく必要があります。もしも可能ならば、ぜひパートナーを説得して発達検査等を受け病院に受診することもお勧めします。

 

ただ発達障害は薬物療法が効果のある方もいれば、あまり効果が表れない方もいらっしゃいます。また本人が少し落ち着いてきても障害そのものが解消するわけではないので、あまり過大な期待はされない方が良いかもしれません。お薬に加えて、ご主人の言動の特性を考えたコミュニケーションの工夫を夫婦で一緒に考えてはいかがでしょうか?

 

たとえば聞く力が弱く、すぐに忘れてしまう方には「必ずメモで説明する」とか、こちらの気持ちが伝わっていないと思われた場合には「私の今の気持ちはこうなのよ」ときちんと説明をして下さい。人の気持ちを察することが苦手だからと言って、説明されてもわからないわけではありません。むしろきちんと説明してもらった方がよく分かって助かるという方もいらっしゃるのです。

 

加えて周囲の人たちにも、粘り強く実際のエピソードを挙げながら説明して、いかにつらい思いをしているかをわかってもらいましょう。そういうような理解と工夫と努力をする中で、ご夫婦の関係性が改善していけばそれに越したことはありません。たとえパートナーがこちらの気持ちを察してくれなくても、周囲の人のサポートがあれば大分違います。

 

もちろんそれだけでは難しく限界が来られたご夫婦の場合、関係を解消される方もいらっしゃいますが、それもご夫婦で十分話し合って、現時点での最善策だと思われた場合には選択肢の一つかもしれません。

 

オフィス岸井では、相談者の気持ちを理解し尊重しながら、具体的な工夫を一緒に考えていきます。そしてご夫婦の関係性を見直すお手伝いをさせていただいています。

もし必要があれば迷わずお申し出ください。