森鴎外は言った

「日の光をかりて光る大きな月よりは

  自ら光を放つ 小さな燈火でありたい」

 

森鴎外の言葉。

 

 

この気持ちわかりますね。

 

太陽は自分自身で陽を発するけれど、

お月様はその太陽の光を反射して夜空に光っている。

 

もちろんだからと言ってお月さまの価値が下がるわけではありません。

太陽の光は確かに地上のあらゆるものを照らして、目に明らかにしてくれるけれど、

時には厳しすぎたり、すべてをさらけ出す残酷さもあります。

 

お月様は確かに、自ら光はしないけれども、

その反射するクッションによって、柔らかく穏やかな陰翳を物事に与えてくれるのです。

 

では「燈火」はどうでしょうか。

 

太陽のように自ら光を発するけれども、周囲を焼き尽くすほどの威力はありません。

せいぜい周囲の人々をほのかに照らし出し、背後に広がる暗闇との対比によって、

その存在を浮き上がらせてくれる、というやさしさがありますね。

 

年齢を重ねていくと、若い頃のようなギラギラした強い光ではなく、

しかし他の存在の光を、ただ借り物のように用いるだけでもない、

自ら光を発しながら、周囲に溶け合うほのかな明かりが大切であるということが

実感されてきます。

 

 

もしかして森鴎外も、そのような心境になったことがあるのかもしれませんね。