ざわめく❝影❞の予兆 <上>                     ~「君たちはどう生きるか」「ゴジラ-1.0」「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」を観て~

ここしばらく立て続けに大変興味深い映画を3本見た。

それはタイトルにあるように「君たちはどう生きるか」「ゴジラ-1.0」「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」なのだが、特に直近観たのは最後の鬼太郎の映画だった。

 

実はあまり期待せずに見たのだが、映画評が比較的良かったので見に行ったのだ。観終わって、いや実は観ている途中から、私は何とも言えない違和感に襲われていた。その違和感は妖怪の恐ろしさとか、戦いの激しさとかではない。実は、他の二本「君たちは・・」と「ゴジラ・・」とあまりにも近いテーマが感じられたからだ。

 

正直見ているのも辛い気分に襲われたのだが、例えて言えば「目の奥がクラクラするような」浮揚感というか、何とも言えない不安に襲われた印象だった。「これはいったい何なんだろう?」と思う前に、「あぁ、またこれなのか・・」という動揺だと思う。

 

「また、これか・・・」というのは、「君たちは・・」にしても「ゴジラ・・」にしても、その背景や状況設定が「戦争」であるからだ。そして「ゲゲゲ・・」を見て、「あぁ、またこれなのか・・」と動揺してしまったのだ。それについては、その時の自分の気持ちをかなり確実に覚えているので間違いない。

 

まだ観ていない人もいるであろうからネタバレをする気はないが、3本とも戦争の場面や状況設定があり、映画そのもののテーマにもかなり深くかかわっていると私は考えている。

それは現在の世界情勢が影響していることは容易に推測できる。ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザへの侵攻、あるいは台湾有事などからくる「不安感」だろうし、その背景にはコロナ危機や温暖化による異常気象など、様々な不安が現在の世の中を覆いつくそうとしている。その影響かどうかは知らないが、私の関わる人たちの中にも、なぜか不安症関連の方が増えてきているのも確かだ。

 

その中での3本の映画である。私の心がざわついて目の奥がクラクラしてくるのも当然かもしれない。そう思いつつ、もう一度3本の映画を思い出してみると、事はそんなに単純ではないと気が付いた。

 

3本の映画の中では、現在の危機や現実の延長線上にあるテーマが語られているのではないのだ。どの映画も、戦争に象徴される「人間の影」ともう言うべき危うさにどう立ち向かうか、が語られているのではないかと思う。ネタバレになるので具体的なことは語れないが、私たち人間を脅かす存在(悪の帝王や怪獣や悪の妖怪など)は、結局人間自身の影の部分なのだろうという事ではないか。

 

戦争というと、国と国やイデオロギーの衝突だとみられがちだが、そんなことではなく「人間の影」、つまり私たち一人一人のこころの中にある「影の部分」が噴出していると捉えられるような気がしている。どちらかが勝つ、負ける、どちらかが正義でどちらかが悪である、というような単純な二分法ではない、もっと混沌とした破壊と死につながるドロドロしたエネルギー。

 

これが悪の帝王やゴジラのような怪獣や悪の妖怪のような形に仮の姿を見せているのではないか、そんなイメージを思わず思い起こさせられた3本の作品だった。

 

<続く>