こころにスッーとしみわたるコミック        「こころのナース 夜野さん」

こころにスッーとしみわたるコミックを紹介します。 それがこれ、「こころのナース 夜野さん」。

 

たまたま、ほんとにたまたま本屋でコミックの新刊をあさっていたら出会いました。出会いと言うものはこういうものですね。そこで即購入。

 

作者の水谷緑さんはナースの経験があるのかと思ったりもしましたが、彼女のサイトを見ると「取材をさせていただける精神科の医療者、施設を探しております」という文章がありました。この作品も5年にわたり精神科の現場を取材して書き上げられたとのこと。

 

確かにどの作品も現場の空気が感じられます。

なんといってもこの表紙。この場面は第2話「月光」と言う作品の1場面ですが、自殺未遂で入院してきた男性が夜中にベッドにいないので、探してみるとその男性は、病棟の椅子に座って月の光を見つめていました。その横に新米ナースの夜野さんが戸惑いながらも一緒に黙って座って、彼と一緒に月の光を心にしみわたらせているシーンです。「月の光」と言うのは陽光と違い、柔らかい癒しの光ですが、その光に包まれながら、二人で何も言わずに(言えずに)数時間を過ごしていくのでした。

 

これは多分取材された方の実体験かもしれませんが、それにしてもこの表紙に描かれた「座っている男性と夜野さん」の間の微妙な距離!!私にはこの距離感こそが、臨床感覚を感じさせてくれる「つかず、はなれず、さりげない」距離であるように思えて仕方がありませんでした。

 

この話以外にも、「家の中に虫がたくさん入ってきてしまう!」という妄想にとらわれた方の話や生きるためにリストカットをせざるを得ない女性の話など、どの話を読んでも臨床現場の空気感が描かれています。

 

 

彼女はこれ以外にも何冊かの医療関係の作品を描かれていたり、医療系の雑誌のイラストを描いているそうです。

 

また一つ楽しみなコミックが増えました。