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発達障害を知る<自閉スペクトラム症③>

今回は、いわゆる自閉症スペクトラムといわれる特性について少し考えていきたいと思います。
自閉症スペクトラムの診断基準の一つに、相手の気持ちがわかりにくい、ということがあげられます。

相手の気持ちがわかるには
では、相手の気持ちがわかるということはどういうことなのでしょう?
たとえばこう考えればわかりやすいと思います。
ある日、あなたは部屋をうろついている時に、思わずたんすの角で、足の小指を思い切りぶっつけてしまいました。「あ、痛ったぁ~!!」誰でも一度や二度はこういう経験あるでしょう。足の小指は本当に痛いんです。

そして数日後、あなたはA君が同じようにたんすの角で足の小指を思いっきり打ちつけた瞬間を目撃しました。
「うゎ!痛いだろうな~!!足の小指は痛いんだ。俺にも覚えがあるよ。」簡単に言うと、これが相手の気持ちがわかった(想像できた)瞬間です。


つまり、自分がこういう時には、こういう思いをした、と自覚できているから、同じような状況の相手の気持ちがわかります。

自閉症スペクトラムの子供たちが、「相手の気持ちがわかりにくい」といわれるのは、実は「自分自身の気持ちに気がついていない」からだと思われます。

感情を意識化できず、振り回されてしまう
私は、この相手の気持ちがわかりにくい(対人社会性の困難なんてむずかしく言いますが)のは、要するに自分というものが十分に意識できていないからだと思うのです。


自分が怒っている、自分が悲しんでいる、自分が不安に感じている、と自分の気持ちを自分でモニターして気がついているかどうか。そこに気がつかずに、いきなり心の中から湧いてきた感情・情動に振り回されてしまうところが自閉症スペクトラムの子供たちには良く見られます。

ですから、まず感情に振り回された状態を鎮めるために十分な時間をあげること、そしてそばにいる私たちが何より気持ちを落ち着けて、冷静な環境となってあげること、その上で自分の気持ちに気づかせてあげることが大切ではないか、と思います。

自閉症スペクトラムの子供たちの課題
なかなか難しいことですが、自分の気持ちに気づかずに、その結果、相手の気持ちを誤解しておきるケンカやトラブルは、予想以上に多いです。ある意味、無駄なトラブルですが、一度おきるとその解決に大変時間がかかり、こちらも疲労困憊しますね。

実はこの「自分の気持ちに気がつくこと」、言い換えれば「自分と言うものに気が付くこと」これが自閉症スペクトラムの子供たちの一番の課題ではないか、というのが今の私の考えです。

 

ただこれはいわゆる障害の本質にも関わることなので、そう簡単に解決できる問題ではありません。たとえば『「あなたはどう思う?」と聞かれるのが一番つらい』と話してくれた方もいます。自分の考えや気持ちがなかなか自覚できないのに、「どう思う?」と聞かれると本当に困惑されることでしょう。

 

 

しかしいろいろな方を関わらせていただくにつれ、私はそういう傾向が少しづつ改善していき、自分自身に気が付く体験をされる様子を見てきました。年齢の後押しや個人差はありますが、次第次第に「発達障害も発達していく」のです。

 

わたしはそれを信じています。