出会いと喪失 「ともだちのなまえ」

今日取り上げる絵本は 「ともだちのなまえ」

 

本屋で立ち読みをして、思わず涙があふれそうになりました。

 

 

 

 

   ・・・・このイグアナはわたしだ、そしてあなただ・・・・

広い海の中にぽつんと一つ浮かんでいる小さな島に、イグアナはたった1匹で暮らしていました。島での生活は居心地もよかったので何不自由なく暮らしていたのですが、イグアナは生まれる前から全く一人で親も兄弟も友達という存在さえ知りません。そこへ遠い空から、羽を痛めたカモメがイグアナのもとへ落ちてきたのです。

 

イグアナは生まれて初めて他者というものに触れ合い、そして「ともだち」というものを知ったのです。

 

人は一人でも生きていけるという人もいれば、一人では生きていけない、という人もいます。しかしそれは他者という存在を知っているから言えることです。このイグアナは初めて他者と接するということを知りました。そして彼にとっては全く意識していなかったのでしょうが、何かが彼の心の中に芽生えたのでしょう。

 

そうして自分と他者との出会いと関係が芽生えた時、カモメはこういいます。

 

〝私はいかなくちゃならないの〟

〝なぜ?〟

〝わたりどりだから〟

 

生まれて初めての出会いの体験のあと、生まれて初めての別れを迎え、イグアナは・・・・・・

 

ここから先はぜひあなたが本を手に取って読んでください。       


萩尾望都さんの名作漫画に「イグアナの娘」という作品があります。この作品では娘を愛することができない母親と、母親から愛されない娘のこころの葛藤が見事に描かれています。その作品ではイグアナは冷血動物であり、自らの感情を凍らせて固い鱗に身を固めた無表情な存在として、母娘の生きざまが描かれています。

 

果たしてイグアナは外から人が見るように、冷血な動物なのでしょうか?

私はそうは思いません。無表情な見た目の中にはさみしさや仲間を求める気持ちや色々な感情が詰め込まれていると思います。

人間も同じ。いろいろな感情を心の中に固めて表に出さず、我慢してしまう、そういう生き方をしている人もいるのではないでしょうか。

私も、そしてあなたも、もっと素直に自分の感情を表に出していいんだ、と思わせてくれる絵本でした。